WCAG 2.2勧告後もなお重要なHTML品質
エグゼクティブ・フェロー 木達 一仁コラム「WCAG 2.2の勧告」では、その主要な変更点の1つとして、既存の達成基準 4.1.1 構文解析(適合レベルA)が削除されたことをご紹介しました。ご存知でない方向けに、以下にウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)が公開しているWCAG 2.1の日本語訳から、達成基準 4.1.1を引用します:
マークアップ言語を用いて実装されているコンテンツにおいては、要素には完全な開始タグ及び終了タグがあり、要素は仕様に準じて入れ子になっていて、要素には重複した属性がなく、どの ID も一意的である。ただし、仕様で認められているものを除く。
なぜこの達成基準が削除されたか、その理由については、アクセシビリティBlogの記事「WCAG 2.2の勧告候補が更新されました」のなかで、中村が(WCAG 2 FAQのWhy is success criteria 4.1.1 Parsing obsolete in WCAG 2.2? What about Parsing in WCAG 2.0 and 2.1?にある記述を参考に)解説しているとおりです:
- 昔の支援技術は独自にHTMLを解析していたが、現在の支援技術はブラウザーが解析したものを利用している
- 達成基準4.1.1の問題は、達成基準1.3.1「情報及び関係性」や達成基準4.1.2「名前 (name) ・役割 (role) 及び値 (value)」でも問題となる
- よって、達成基準4.1.1の規定は不要になった
- 既に勧告になっているWCAG 2.0や2.1も達成基準4.1.1について更新するかもしれない
以上をもって、HTMLが仕様に対し厳格に準拠する必要がなくなったとか、Nu Html Checkerのようなツールを用いてエラーの有無を確認する価値がなくなった、などと考えるのは早計と私は考えます。
確かにWCAG2への適合、ないしJIS X 8341-3への準拠といった文脈においては、今後HTMLの妥当性の検証は必須でなくなるでしょう。しかし、HTMLを解析するのは何も、主要なモダンブラウザや、それと連携する支援技術ばかりとは限りません。
Webで公開する以上、より多くのHTMLパーサー(HTMLを解析するソフトウェア)、より多くの閲覧環境を通じて、コンテンツが伝わることを期すべきです。そのためには、コンテンツがしっかりHTML標準をはじめとするWeb標準に準拠していることが大前提として必要でしょう。
従い制作進行上、HTML仕様に準拠した、エラーのない(いわゆる「Validな」)HTMLであることの検証には、WCAG 2.2の勧告以前と変わらぬ意義と価値があります。その種の検証を通じ、上述の達成基準1.3.1や達成基準4.1.2への不適合を早期に発見・修正できるというメリットも、依然として期待できます。
ゆえに、私がWeb品質Blogの記事「品質の追求(その1)Web標準準拠」で記した、Auto Validatorを用いたHTML品質の社内検証は、今後も継続します。運用案件などでの一部例外を除き、仕様に準拠していること、エラーのないことを確認したHTMLを、お客様にご納品します。
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