持続可能なWebを目指して
エグゼクティブ・フェロー 木達 一仁2023年の最終営業日となりました。社員一同を代表しまして、顧客の皆様に厚く御礼申し上げます。年間を通じてのご愛顧、誠にありがとうございました。
2023年の漢字は「税」でしたが、今年を振り返ったとき真っ先に思い起こされる話題は、ChatGPTに代表される生成AI。その活用は今や、業種・業界を問わず流行の域を超え、定着し始めているように感じます。
先日開催したばかりの2024年のWebデザイントレンド 解説セミナーにおいても、私のパートでは他の話題との兼ね合いから言及できなかったのですが、アートディレクターの遠藤が生成AIの活用法についてご紹介しました。
どの業務なりプロセスで、どのように生成AIを活用すると良いかといった話題は、引き続き2024年も頻繁に取り沙汰されることでしょう。ところで、生成AIに関して私が気にしているのが、その消費電力の大きさです。最近でも、
ハギング・フェイスとカーネギー・メロン大学の研究グループは、生成AIモデルによるエネルギー消費量と二酸化炭素排出量を調べた研究成果を発表した。特に画像生成モデルでは大量のエネルギーを消費することが分かり、モデルの訓練だけでなく「使用」時の省エネ化が課題として浮き彫りになった。
という記事を目にしました(MIT Tech Review: AI画像生成のエネルギー消費量、スマホのフル充電に匹敵)。確かに生成AIは優れた技術であり、業務上すでに必要不可欠な存在となりつつありますが、利便性に目を奪われるあまり、それが与える環境負荷に、私たちは無頓着になってしまってはいないでしょうか?
同じ傾向を、インターネットについても認めます。生成AIより遥かに広く・深く日常生活に浸透したインターネットについて、その消費電力に想いを馳せるのは稀でしょう。しかし書籍『Sustainable Web Design』によれば、2018年当時のデータになりますが、インターネットをひとつの国にたとえると、その二酸化炭素排出量は世界第6位だそう。それくらい、大量の電力消費を背景に機能しているということです。
今年の夏の暑さは、記憶に新しいでしょう。国連のグテーレス事務総長は、今年7月が観測史上もっとも暑い月となる見通しになった際、「地球沸騰の時代が訪れた」と発言しました。そして年単位でも2023年が史上もっとも暑い年になるとの予測を、BBCが報道しています(2023年は「ほぼ確実に」史上最も暑い年に、10月も最高気温を更新 - BBCニュース)。
高気温の主要因としてBBCの記事で指摘されているのが、二酸化炭素の排出。温室効果ガスの排出をいかに抑え、また地球温暖化を抑制するかは、まさに喫緊の課題といえます。そうしたなか、今年Web Sustainability Guidelines(WSG)1.0が登場したのは、コラム「サステナブルWebデザインを実践するためのガイドラインが登場」に記したとおり、注目に値します。
来たる2024年、私としては段階的に、WSG 1.0を実務に取り入れたい考えです。WSG 1.0の内容はまだ不安定であり、大幅に変更される可能性もありますが、当社がこれまで取り組んできた制作物の品質向上と概ねベクトルを同じくするものです。来年4月に迫った改正障害者差別解消法の施行を前に、近頃アクセシビリティに関するお問い合わせが増えていますが、WSG 1.0にはアクセシビリティの確保も包摂されています。
WSGの今後の成熟と足並みを揃えつつ、Web標準準拠やアクセシビリティ、レスポンシブWebデザイン、表示パフォーマンスと同様、当社制作物の当たり前品質として、Webサイトの持続可能性を謳うことが最終的な目標です。環境や社会の持続可能性に配慮した、サステナブルなWebサイトの構築・運用を強みにすることが、顧客の皆様のみならず当社の事業継続性を高め、そしてまたWeb全体のサステナビリティ向上につながると信じます。
最後になりますが、先だってお知らせしましたように、明日12月29日から2024年1月3日までは、年末年始休業日となります。新年の営業は1月4日からです。皆様、良い年末年始をお過ごしください。
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