「Webサイト リライアビリティ(信頼性)改善」サービスリリースに寄せて
第六事業部 チーフリライアビリティエンジニア 黒澤 剛志先日、Webサイト リライアビリティ(信頼性)改善サービスをリリースしました。このコラムでは本サービスの背景にある2つの信頼という考え方を紹介します。
2つの信頼
信頼を考えるにあたってまず確認しておきたいのが、Webサイトをとりまく環境が加速度的に変化している点です。ここ数年で見ても、コロナ禍や生成AIなど、私たちの行動や考え方に影響を与える変化が立て続けに起きていますし、その変化は事前に想像しがたいものでした。加速する変化に数年おきのリニューアルだけで対応するのは難しく、リニューアル後も継続的にWebサイトを改善していくことが重要になっています。
一方で、Webサイトを改修することで不具合を招いたり、過去に修正したはずの不具合が再発したりしていては、元も子もありません。機能的な不具合にいたらなくても、コンテンツが表示されるまでに長い時間がかかる、といった品質低下にも注意が必要です。様々な調査から品質低下によって新しいユーザーを獲得できなかったり、これまでのユーザーを失ったりすることが分かっています。
Webサイトが今日も明日も当たり前に使えるものとしてユーザーから認識されているからこそ、改善のための施策に効果がでてきます。
当たり前といえば当たり前ですが、2つの信頼のうち1つ目はWebサイトがユーザーから信頼されることです。
2つ目の信頼はWebサイトを運用している側における信頼です。
不具合や品質低下が重なってくるとWebサイトを運用している側の行動や考えにも影響がでてきます。不具合や品質低下をおそれるあまり、必要な施策を実施できなくなったり、施策の質や量を下げざるを得なくなってしまいがちです。実施できても事前検証などに必要以上の時間をかけてしまうと、変化の激しい現代では競合優位性を失いかねません。改善を実施できず、変化に対応できないWebサイトは徐々に目的を果たせなくなり、価値を減らしていってしまいます。
このように自分たちのケイパビリティ(組織として持ち合わせている能力)への信頼を失うことも、Webサイトの価値を損ねてしまいます。
これらを踏まえると、Webサイトの運用では
- 作業が不具合や品質低下を招いていないことを高速に検証
- 万一問題が生じた場合の早期発見・早期対応
が重要です。そして、そのことを直接的な作業者だけではなく関係者が共通して認識することで、積極的な改善に打って出られると考えています。
本サービスでの取り組み
本サービスではこれまで述べてきた問題を、継続的な改善を前提としたインフラの導入や運用支援によって解決していきます。
Webサイトの公開を目指すあまり、その後の改修を見込んでいないインフラで運用しているWebサイトは残念ながら多くあります。そのようなWebサイトで改修を続けると、改修のたびに本来は不要な作業が発生して時間がかかったり、手戻りが発生したりしてしまいます。それらは最終的には不具合や品質低下につながり、ユーザーからの信頼も内部からの信頼も失いがちです。
今回のリリースではCMS向けのメニューを用意しており、CMSの機能などをつかさどるソースコードの管理や自動検証、各種サーバーへの自動反映を行うインフラ(クラウドサービス)の導入や運用を支援します。
また、ユーザーから不具合の問い合わせを受けて調査したところ、不具合は長期間発生しており、問い合わせたユーザー以外にも影響していることが分かった、という話もしばしば聞きます。
人為的なミスによる不具合もありますが、最近ではWeb技術の変化による影響にも注意が必要になってきました。これまで、Webの標準的な技術は「過去動いていた機能はこれからも動き続けること」(後方互換性)を重視してきました。Webサイトを運用する側から見ると、不具合なく動作することを一度検証すれば、その後は手を入れなくても動作し続けることを意味していました。
しかしながら、Web技術もプライバシー向上やセキュリティ向上のために後方互換性を維持しない変更が増えています。代表的な例がサードパーティーCookieをめぐる変更(規制強化)です。後方互換性が維持されない場合、過去に不具合がないことを検証済であっても、ある日を境に機能しなくなります。
公開前の検証を行うことは前提としつつ、公開後においても機能的な不具合(エラー)や品質低下を収集し、能動的に対応することがこれまで以上に重要になると考えています。
こちらについても、本サービスでは機能的な不具合を収集するインフラ(クラウドサービス)の導入や運用を支援します。
おわりに
本サービスは当社のこれまでのサービスとは切り口がやや異なりますが、Webサイトの継続的な改善を実現したいという想いは変わりません。Webサイトの継続的な改善にお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。
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