CMMI、実践中間報告!(第5回)
取締役 IT事業部長 高田 淳志昨年度1年間をかけて練り上げてきたCMMIプロセスの本格的な運用を開始する今年度。おりしも、CMMIモデルの公式日本語翻訳版の提供が開始されました。(参考:日本語翻訳版詳細)
弊社としても、「あるプロジェクト」「あるお客様」のためというミクロな視点だけではなく、CMMIを活用した自社のQCD活動を通して業界全体の最適化に貢献していきたいという願いのもとで活動を続けていますが、おそらくは同様の思いで膨大な情報量のCMMIモデル翻訳プロジェクトに関わられた組織・個人の皆様(翻訳文書中に記載されています)に、この場を借りて深く感謝及び労いの意を表明したいと思います。
弊社開発プロセスの特徴
弊社の開発プロセスの全貌概要は、前回のコラム「CMMI、実践中間報告!(第4回)」にて簡単にご紹介しました。ここまでのプロセスを築くにあたり、コンサルタントとして実に粘り強くお付き合い頂いたサティヤム社荒川氏のご尽力によるところはもとより、業界の長い歴史の中で培われ、発展してきたさまざまなノウハウをフルに活用しています。
開発方法論に関しては、書籍を含めた数多くの情報源があり、CMMIにご興味を抱かれる方の頭の中にはいくつもの名前が浮かぶのではないかと思いますが、全体的な流れとしてはドキュメント重視の工程展開を約束事としています。いわゆるHeavyweightな方法論の流れです。各フェーズの作業が明確に定義され、インプット・アウトプットを含めた作業フローが示され、レビューの実施方法や達成基準が定められ・・・というようなものです。いろいろな開発方法論がありますが、一番近いものがあるとすれば、RUP(Rational Unified Process)の影響を大きく受けているという面はあります。
ただ、全体的にはXP(eXtreme Programming)のような臨機応変型の開発方法を排除するものではなく、そのようなプロセス適用を前提とした活動も含めて計画要素として定めておけば可能、という柔軟な定義内容となっています。イテレーションを単位とした活動も、コーディング後のリファクタリングも、予め計画しておけば良いという方針です。「それでは、結局エンジニア個人の判断に依存するのではないか?」という意見があるかもしれませんが決してそうではありません。
プロジェクトを運営していく中では、「どんな場合も必ずやらないと」という要素があれば、「こんな場合は臨機応変に」という要素も存在します。弊社のような、大小さまざま、ジャンルもさまざまな開発案件に取り組んでいくためには、硬直したプロセスはむしろ業務効率を落とし、将来への発展を阻害し兼ねません。その代わり、その臨機応変さの妥当性に関して、都度徹底的にレビューやSPI(プロセス改善活動:Software Process Improvement)活動で審査・フォローをかけていく、そこにこそ弊社の開発プロセスの最大の特徴(いずれ、「特長」になると信じています)のように思います。
さまざまなプロジェクトで目標品質を達成するために
前章にも書いた通り、弊社の開発プロジェクトは実にさまざまなタイプのものがあります。その中で、現在は次の3プロジェクトが既に設計/実装といったエンジニアリングフェースに突入しています。
プロジェクト | 規模 | 対象 | 新規性 | 技術要素 |
---|---|---|---|---|
プロジェクトA | 15人月程度 | 基幹業務イントラネット | 新規構築 | Java,RDBMS |
プロジェクトB | 7人月程度 | 情報系イントラネット | 前システム・アップグレード | ASP,特殊DB |
プロジェクトC | 3人月程度 | Web系インターネット | 前システム・リプレース | Perl |
他のプロジェクトは未だ要件定義段階だったりするため、具体的な指標が計上されてくるのは上記の3プロジェクトしかありませんが、意図してタイプの異なるものを選抜した訳ではなく、この1月くらいからの期間で発生した案件が結果的にタイプの大きく異なるものでした。しかし、これが弊社の取り組むべき現状です。
「3人月程度のプロジェクトにまで適用していたらオーバーヘッドじゃないのか?」という意見はあるかもしれません。確かにコスト的なリスクは格段に下がります。仮にコストの見積もりに失敗して倍の工数がかかったとしても、損失はせいぜい3〜4百万、経営に大きなダメージを与える程のことではありません。
けれど、顧客満足度の向上を重要な品質目標に置く弊社(弊社コラム:「品質とは何か」)には、受注金額で達成品質の高低を区別するような発想はありません。
例えて話をしてみます。私は、若手メンバーにソフトウェア開発を建築に例えて話したりすることがあります。
さながら、受注額の大きい案件はいわば大規模プラントの建造、一方で受注額の小さな案件は庶民(もちろん私も庶民です)の夢、マイホームの建築だとしましょう。両者を比べれば、確かにステークホルダー(利害関係者)の数も違えば、当然その目的も全く異なります。おそらく、完成までに注ぎ込む技術要素も大規模であればある程、大きなウェイトを占めることと思います。満足度や完成度を図る指標もおそらく異なることでしょう。
しかし、弊社が考える達成目標は同じです。大規模プラントにしても、家一戸にしても、その目的に対して満足な内容が得られたと、お客様に認めて頂けることが弊社の最終目標です。
果たしてこの開発プロセスがどれ程効果的であったか、納期である6月〜7月くらいにかけて明確になってくることと思います。今のところは、弊社スタッフも初めてのプロセスへの参加ですから、作業手間や不慣れによるストレスの方が大きいかもしれません。もしも、何の効果も感じられないようであったなら、現在の内容はおよそ完成度が低いということ。その効果を知るのが楽しみなような怖いような気もしますが、結果が良くも悪くも、きちんと『改善』しながら育て上げていきたいと考えています。
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