広島で開催されたW3C AC会議
エグゼクティブ・フェロー 木達 一仁4月8日から9日にかけての2日間、広島で開催されたW3CのAdvisory Committee Meeting(以下「AC会議」)に、出席してきました。
W3Cとは、さまざまなWeb技術の標準化を推進しているWorld Wide Web Consortiumのことで、今年の秋に設立30周年を迎えます。W3Cには、各会員組織の代表者から構成される、Advisory Committee(AC)と呼ばれる内部組織があります。そのACのために年に2回、国や都市を変えて催されるのが、AC会議です。
私は、2004年にW3Cに加入して以来、当社の代表者(Advisory Committee Representative、略してAC Rep)を務めてきました。しばらくのあいだ、コロナ禍やら何やらでAC会議から足が遠のいてしまっていたのですが、地の利がある日本での開催ということで、久しぶりに現地参加を決めた次第です。
ちなみに、AC会議に触れた過去のコラムには、取締役社長の藤田が書いた「拡張し続けるWeb技術 〜AC Meetingに出席して〜」や(2005年)、私の書いた「One Webへの思い新たに」があります(2009年)。
さて、AC会議は外部に非公開のクローズドなものであり、どのような議論があったかを紹介することはできません。従い、本コラムでは会議への出席を通じ私が思ったり感じたりしたことを3つ、挙げたいと思います。
1つ目は、30年にわたってW3Cが標準化活動を継続し、Webにおける高い相互運用性を実現してきたことへの感謝と驚異の念です。紆余曲折はあったにせよ、W3Cとそこに集う方々の尽力なくして、今日のWebはありえません。ゆえに、W3Cの存続に貢献された方々の存在を、大変ありがたく思いました。
2つ目は、1つ目と関連しますが、今後のW3Cへの期待です。W3Cは昨年、その運営形態やガバナンスを大きく変え(W3Cが公益非営利団体として再始動)、CEOにSeth Dobbs氏を選出しました(W3C、次期CEOにセス・ドブス氏を発表)。新生W3Cのこれからの発展を強く祈念し、また期待をしています。
3つ目は、上述の期待感と相反しますが、私たちが正対すべき課題がいかに大きなものか、ということです。その課題の一端は、Webの発明者でありW3Cを創設したTim Berners-Lee氏が先月、Webの35回目の誕生日に寄せて記したMarking the Web’s 35th Birthday: An Open Letter(yomoyomo氏による日本語訳)で読めます。
以上、ざっくばらんに書かせていただきましたが、引き続き当社としては微力ながらW3Cでの標準化活動を支持し、また支援をすることで、業界はもとより広く社会に貢献していければと思います。20年前、W3Cへの加入を決断した代表取締役会長の髙橋は、コラム「W3Cへの参加」のなかで次のように記しました。
いまだWeb標準が社会浸透していない要因の一つとして、Web構築を担う我々自身がその主旨を十分には理解しておらず、極論すれば無頓着な状態にあったため、と言えるかもしれません。
弊社はまず自らを反省し、W3Cの理念を十分理解したうえで、共に活動に携わります。そしてWebの更なる発展に向け、素晴らしい技術を実践し、その効果を証明することで、社会に貢献していく所存です。
今でこそWeb標準への準拠は業界の常識となりましたが、Webの生誕35周年、W3Cの設立30周年、そして当社のW3C会員継続20周年を機に、上に引用した言葉を改めて噛み締めたいと思います。
Newsletter
メールニュースでは、本サイトの更新情報や業界動向などをお伝えしています。ぜひご購読ください。