環境・社会・経済の持続可能性に貢献するWeb品質
エグゼクティブ・フェロー 木達 一仁業種・業界を問わずサステナビリティ、持続可能性への貢献が企業活動に求められるなか、当社としてはW3Cで策定中のWeb Sustainability Guidelines(WSG)にある達成基準を可能な限り満たしたWebサイト構築・運用、コンテンツ制作を標準的に実現しようと考えている旨は、たびたびコラムに記してきました。
- サステナブルWebデザイン最新動向(2022年10月21日 掲載)
- サステナブルWebデザインを実践するためのガイドラインが登場(2023年9月26日 掲載)
- 検品におけるブラウザチェックの再考(2024年8月27日 掲載)
WSGのバージョン1.0では、個々の達成基準を「ユーザーエクスペリエンスデザイン」「Web開発」「ホスティング、インフラストラクチャ、システム」「事業戦略と製品管理」の4カテゴリに分類しています。その分類はさておき、当社がこれまで注力してきたWeb品質が、持続可能性とどう関わっているかを改めて考えてみました。
持続可能性の文脈でよく語られるのが環境、社会、経済という3つのカテゴリです。これらを下から順に積み上げたピラミッド図を以下に示しますが、これは環境が持続可能でなければその上に乗っている社会は持続可能たり得ず、同様に社会が持続可能でなければ経済は持続可能たり得ない……という依存関係を、階層構造であらわしたものです。
図1にある特定のカテゴリ/層と、当社が注力してきた個々のWeb品質なりサービスを一意に紐づけることは難しく、たとえばUXの改善は環境、社会、経済のいずれにも貢献し得ると理解しています。しかし、多少の無茶を承知で敢えて一意に紐づけるなら、以下に示す図のように整理できると私は考えています。
この紐付け、関連付けの私なりの根拠を、簡単に解説します。
環境
消費電力を減らし、つまり温室効果ガスの排出を減らすことは、地球温暖化の及ぼす影響が懸念される昨今、喫緊の環境課題とされています。
Web標準への準拠は、さまざまな閲覧環境において意図した通りの表示や動作を実現し、なおかつエラー処理を不要にします。加えてマルチスクリーン・デザイン(≒レスポンシブデザイン)を採用することで、表示画面のサイズごとに作り分けることなく、さまざまな閲覧環境に対し一定の見やすさ・使いやすさを提供できます。いずれも、消費電力の抑制に貢献し得る品質です。
また、コンテンツの表示速度を含む表示パフォーマンスの良し悪しは一層、消費電力の多寡に直結します。表示速度は速いほうが、概してコンテンツ利用時の消費電力は少なく済みます。
社会
Leave No One Behind(LNOB)、誰一人取り残さないというフレーズは、国連で「持続可能な開発のための2030アジェンダ」、いわゆる「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」が定められて以来、頻繁に見聞きするようになりました。
このフレーズに通底するのが、障害者・高齢者を含むあらゆるユーザーにとっての使いやすさであり、アクセシビリティと呼ばれる品質です。コンテンツのアクセシビリティを継続的に維持・向上させることにより、誰一人としてユーザーを取り残さないWebサイトが実現できます。
経済
環境や社会の持続可能性に貢献し得る品質を確保したうえで、同時に経済、すなわち当社にとってのお客様のビジネスを持続可能にする品質を、Webコンテンツは備えるべきです。
ファインダビリティ、Webコンテンツの見つけやすさには、サイト外での見つけやすさ(SEO対策やSNS運用など)と、サイト内における見つけやすさ(情報設計の良し悪しやサイト内検索の使い勝手など)の両方が含まれます。ターゲットとするユーザーにコンテンツを見つけてもらうことは、ビジネスを成立させる第一歩です。
そのターゲットユーザーがコンテンツを利用する際の効率・効果・満足度は、ユーザビリティとして測ることができます。当然、ユーザビリティに優れた、ターゲットユーザーにとって使いやすいコンテンツは、ビジネスに不可欠です。さらには、コンテンツの利用前・利用中・利用後を通じ、優れたユーザー体験(UX:User Experience)を提供することができれば、ビジネスの持続可能性の一層の向上が期待できます。
以上、私見に基づく分類・整理を書かせていただきましたが、当社が注力してきたWeb品質やサービスは、いずれも環境・社会・経済の持続可能性に資するものと信じます。今後、WSGの内容がどのように改定されようとも、私たちのこれまでの取り組みを進化&深化させることで、お客様のビジネス、社会全体、ひいては地球環境の持続可能性に貢献できると信じます。
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