サステナブルWebデザイン最新動向
取締役(CTO) 木達 一仁私がコラムで最初にサステナブルWebデザインを取り上げたのは、2020年1月に公開した「サステナブルWebデザイン」です。以来2年弱が経過しましたが、そのあいだに関連して以下のコラムを執筆してきました。
- 加速するSDGsへの取り組みとWebデザイン(2020年10月)
- グレート・リセットの先を見据えて(2020年12月)
- DX&SXの時代(2021年6月)
- サステナビリティ経営時代のWeb品質(2022年2月)
ほかにも、2021年3月にミツエーテックラジオの#11「サステナブルWebデザイン」で取り上げたり、また年に1回程度、関連するセミナーを開催してきました。
比較的最近になって、このサステナブルWebデザインに関し、個人的に注目に値する動きが2つありましたので、ご紹介したいと思います。
Web Almanacに「Sustainability」の項目が登場
HTTP Archiveが2019年から年次で発行している報告書に、Web Almanacと呼ばれるものがあります。膨大な統計情報をもとにWeb全体の傾向をレポートしており、大変興味深い内容です。
先日そのWeb Almanacの2022年版が公開され、アクセシビリティの項目についてはアクセシビリティBlogで紹介していたのですが、個人的に注目したのが第3部「コンテンツ公開(Content Publishing)」の中に持続可能性(Sustainability)が追加されたことです。
この項目は、過去のWeb Almanacには存在しなかった項目であり、社会全体がSDGs、ひいてはサステナビリティへの取り組みを強化し続けている世相を反映したものと理解できます。この項目を取りまとめた著者には、書籍『Designing for Sustainability』を執筆したTim Frick氏も名前を連ねています。
当該項目では、Webページが表示されるのに読み込みを必要とするファイルの総容量に基づく環境への影響の評価であったり、あるいは影響を抑制するためのさまざまなベストプラクティスがまとめられています。
日本国内でも、企業によるSDGsやサステナビリティへの取り組みは年々活発化していますが、そういう企業において業務でWebを活用している広報・PRやマーケティングの担当者の方々には、ぜひとも目を通していただきたい内容です(残念ながらWeb Almanacの目次は日本語訳されているものの、現時点でコンテンツのほとんどが英語のままですが……)。
事業活動とSDGs/サステナビリティへの取り組みの同軸化を進める企業であれば、当然、自社の運用するWebサイトが環境に与える負荷にも無自覚・無関心ではいられないはずです。そして環境負荷を抑えることがユーザーにとっても、ひいてはビジネスにとっても好影響が期待できることは、 当社のサステナブルWebデザイン ソリューションで謳っているとおりです。
W3CのSustainable Web Design Community Groupの活動が活発化
今年5月にサステナブルWebデザインに関するガイドライン策定の動き、という記事をフロントエンドBlogに書きましたが、その中で言及したW3CのSustainable Web Design Community Groupが、活動を活発化させています。
私の認識する限り、9月にハイブリッドで開催されたTPAC期間中のものを含め、今年に入って複数回ミーティングが開催れたほか、Sustainability Community Group Charterが整備されました。そのCharterの「Mission」には、次のようにあります(日本語訳は私による意訳)。
This group will create guidelines, tools, and resources for web and digital professionals to incorporate environmental sustainability and related principles into their workflows and work practices. Our goal is to make the process of creating digital products more sustainable, while the use of digital products should also encourage better practices for users.
(このグループは、環境の持続可能性とそれに関する原則を、Webやデジタルの専門家が業務の手順や内容に取り入れるためのガイドライン、ツール、リソースを制作します。私たちの目標は、デジタル製品の制作プロセスをより持続可能なものとすると同時に、そのようなデジタル製品の使用が、ユーザーに対してもより良い行動を促すようにすることです。)
最近になって同Community GroupのWikiも活性化しており、特に関連リソースを取りまとめたReferencesのページは圧巻です。現時点では英語で書かれたものばかりのようですが、それでもサステナブルWebデザインについて学び、理解を深めるには十分な量のリソースが一元化されています。
当社におけるサステナブルWebデザインへの取り組み
冒頭で触れた、初めてサステナブルWebデザインについて書いたコラムにおいて、私は以下のように記しています。
いわばサステナブルWebデザインの実現は、当社における制作物の品質向上に向けたこれまでの取り組みの集大成との側面を持ちます。
制作物の品質向上に向けたこれまでの取り組み
については、Web品質Blogのほうで昨年10月から細々と書き続けてきた以下のシリーズ記事が参考になるかと思います。
- 品質の追求(その1)Web標準準拠
- 品質の追求(その2)Web標準準拠の普及
- 品質の追求(その3)アクセシビリティ標準対応
- 品質の追求(その4)標準対応の進化とアクセシビリティに関する多様な取り組み
- 品質の追求(その5)レスポンシブWebデザイン
- 品質の追求(その6)レスポンシブWebデザインの検品
- 品質の追求(その7)表示パフォーマンスの「当たり前品質」化への取り組み
- 品質の追求(その8)表示パフォーマンス計測の仕組み化
2023年以降においては、従来の取り組みを引き継ぎつつ、経済・社会・環境のいずれに対してもサステナビリティの観点からより高いレベルで貢献できるよう、品質向上の取り組みを強化したいと考えています。言わば、サステナブルWebデザインの社内標準化であり、当然それは当社にとってSDGsへの取り組みの重要な一角を成すことでしょう。
その一連の取り組みにおいては、上述のW3CのSustainable Web Design Community Groupが将来発行するであろうガイドラインも、重要な品質基準として準拠を検討することになると思います。今後、可能な限り私自身、同Community Groupの活動に参加したい考えです。
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