企業とは? -企業戦略-
企業戦略は、最上流に位置する3つの要素である、「意思」「4つの視点(バランススコアカード)「クローズド・ループ・システム」と現状の事実=社会変動、市場変動等を加味しながら、具体的なアクションプランを導き出すための具体的方向性を決める部分を受け持ちます。これらは、事業領域、経営資源、成長戦略、成長マトリックス、ポートフォリオ(資源分配)の要素を整理するプロセスを踏みながらおおむね決定されます。
(1)事業領域
事業領域は、ドメインとも言われ、何を、誰に、どのように、の3つの視点を整理することにより明確になります。一般的には、企業を製品・サービスによって捉えたりしますが(例えば、自動車メーカー、航空会社、化粧品メーカーなど)、事業領域を明確にする際には、何を提供するか?という製品・サービスの視点だけでなく、どんな相手に、どのようにして、を加えた3つの視点で捉えることが重要です。
参考:顧客の経験によって事業領域を捉える
マーケティング戦略、ブランド戦略の分野における考え方の1つに「経験価値(エクスペリエンス)」「ブランド体験(ブランド・エクスペリエンス)」と呼ばれているものがあります。そもそもマーケティングといえば顧客主体をコンセプトとするものですが、実際には製品主体による機能とベネフィットを軸としたマーケティングが行なわれています。これに対し、顧客が製品・サービスに触れるあらゆる瞬間(製品・サービスを選ぶ時、購買する時、利用する時など)に感じる価値に焦点を当てて、顧客への価値提供をより広く、統合的な視点で捉える考え方です。
ユーザーのアウトプット要求、サービス要求のページに詳しい説明がありますが、顧客の要求には2種類あることが知られています。アウトプット要求とサービス要求です。少し乱暴な区分にはなりますが、自動車メーカーに対する顧客のアウトプット要求は自動車を提供してくれることです。しかし、言うまでもなく、顧客が実際に求めるのは単なる自動車以上のもので、購買時のスタッフの対応やアフターサービスはもちろん、所有する喜び、走りの快適さなど、サービス要求レベルでは、人によって様々な要求事項が考えられます。当然、ひとつの企業がすべての人の要求を満たすのは不可能ですし、また、それを目指すのは、逆に企業イメージ、ブランドイメージをあいまいにしてしまい、企業価値、ブランド価値を破壊することにもつながりかねません。
何を提供するか、主要顧客は誰なのか、サービス基準をどのように設定するかといった3つの視点で事業領域を捉えるということは、単に製品の視点で自社の事業領域を捉えることを超えて、誰に何をどのように価値提供するかというより顧客にフォーカスした視点で自社の事業領域を捉えることにつながります。顧客の経験にフォーカスするためには、顧客が企業・ブランドと接するあらゆるコンタクトポイントで顧客の経験価値を高められるようサービス設計を行ない、サービスクオリティを管理する必要があるでしょう。顧客の経験にフォーカスすると、自社の事業領域の捉え方がまったく変わって見えてくるはずです。
(2)経営資源
経営資源の整理は、市場に対して企業活動するための現有勢力を見ることを可能にします。これによって戦略の方法論や切り口が企業によって異なってくることは言うまでありません。それぞれの企業が採るべき戦略は、自社の持つ経営資源の大きさによって異なりますので、自社に最適な戦略を選択する際には、ランチェスターの法則などが参考になるでしょう。
(3)成長戦略
成長戦略は、企業成長の方向性を示すものであり、どの戦略によって企業成長を図ろうとしているかを明確に示すものです。成長戦略は3つの視点を持っており、事業領域、経営資源の影響を受けながら、決定されます。
(4)成長マトリックス
成長戦略は、企業成長の方向性を示すものであり、どの戦略によって企業成長を図ろうとしているかを明確に示すものです。成長戦略は4つの視点を持っており、事業領域、経営資源の影響を受けながら、決定されます。
また、成長マトリックスはアンゾフによって提唱された戦略立案モデルであり、下図のようにマトリックスを作ります。
成長マトリックス Growth matrix
- 1. 市場浸透
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現状の製品で、現状の市場に攻める戦略
- 2. 市場開発
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現状の製品を、新たな市場に投入する戦略
- 3. 製品開発
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現状の市場に対して、新しい製品を投入する戦略
- 4. 多角化
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新しい市場に、新しい製品を投入し掘り起こす
(5)ポートフォリオ(資源配分)
ポートフォリオでは、決定された戦略に、いかに(効率的かつ効果的な)経営資源の配分を行なうかを理解することができます。いくつかの手法がありますが、下図ではBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)によるポートフォリオ・マトリックス(あるいは「成長/市場シェア・マトリクス」とも呼ばれます)を紹介します。
ポートフォリオ Portfolio
- 1. 拡大/育成
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短期的利益を犠牲にしても「スター」になる可能性のある「問題児」に適用されます。
- 2. 維持/保持
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現在のマーケットシェアの維持を図るため、特に強力な「金のなる木」に対して適用されます。
- 3. 収穫
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長期的な影響は無視して、短期的なキャッシュ・フローの増大を図ります。これはその将来性があやしく、かつ現在そこからより多くの利益をあげたい「金のなる木」に適します。「問題児」や「負け犬」に適用されることもあります。
- 4. 撤退
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資金の有効利用のため、部門売却あるいは清算を行ないます。これは、収益に悪影響を与えている「問題児」や「負け犬」に適用されます。
まとめ
5項目からなる企業戦略は、インターネット戦略にどのような影響を与えるのか?それは、
- 事業領域、経営資源の把握によって、企業が狙う的の方角と現状のパワーを理解でき、インターネット戦略で活用可能なツールを方向付けることを可能にします。また、インターネット戦略を実行する上で、プロジェクトを定義するに当たり、スコープ、前提条件・制約条件を示唆することになります。
- 成長戦略、成長マトリックスは、企業として行なうべき戦略の重点事項、向かうべき方向性を明示することが可能であり、インターネット戦略を実行する上で、プロジェクトを定義する際の目的に当たる部分を示唆することになります。
- ポートフォリオの把握は、インターネット戦略を実行する上で全体の構成要素を決める際のSBU(事業単位)や、製品・サービスのプライオリティ付けを行なうことを可能にします。
ここでは、企業戦略について解説をしてきました。インターネット戦略の2段階上流にある企業戦略を理解することは、インターネット戦略の心臓部を把握するに等しいと言っても過言ではありません。インターネット戦略の定義づけ(=心臓部=目的・ゴール・スコープ・スケジュール・前提条件・制約条件)は、戦略上で最上流を意味し、この部分をしっかり押さえた上でアクションプランに落とし込むことが、成功要因の最もクリティカルな部分と言えましょう。
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