インターネット戦略の実行 -定義-
定義するということは、われわれ日本人にとって極めて苦手な項目と言えるでしょう。しかし、定義しない限り結果の良しあしを判断することは不可能ですし、プロジェクトが運用段階に入った場合でも継続的改善フェーズにステップを進めることも不可能です。それほど、定義づけは重要な項目と言えるでしょう。定義づけは、項目と順番に従えば誰でも行なえます。それではひとつひとつ解説していきましょう。
(1)目的
目的(求められる成果は何か?)
- 利益を確保することなのか?
- 利益を確保するためのビジネスプロセス構築なのか?
- ビジネスプロセスを支える情報システムを構築することなのか?
- ビジネスプロセスを最適化するための継続的改善プロセス構築なのか?
上記は代表的な例と申し上げておきます。うまくいかない場合は、セグメントがうまくいかないだけです。分類方法の視点を少し変えると、見えないものが見えてきます。とにかく目的を明確にしましょう。
ビジネスプロセスの意味
ビジネスプロセスとは、受注や製品出荷などの商品管理から人的資源の管理に至るまで広範な分野に及ぶ企業の諸活動のことです。
最適化の意味
最適化は非常に便利な言葉ですが、使う人によって定義がマチマチです。われわれは企業の持続的発展というテーマでソリューションを行なっております。したがって当社でいう最適化という語句の意味は下記を意味します。
最適化=プロジェクトが運用段階に入り、結果を踏まえて、常に継続的改善を伴う思考および行動が実施される地点。
(2)ゴール
ゴール(どの到達地点まで行くか?)
- いくらの利益を確保するのか?
- ビジネスプロセスによって、何をどの程度の生産性を上げ、あるいはどの程度の改善を実施するか?
- 情報システムが果たす機能と範囲は何か?
うまく定義づけできない場合は、そのヒントは、上流概念にあります。
参考:ゴールには、良いゴールと悪いゴールがある
最初に目標を設定し、仕事の進展にあわせ、それらを確認し続けることはビジネスの成功に必要不可欠なことです。もちろん、それはインターネット戦略の実行を行なう際でも同じです。最初にゴールを設定し、それが達成できたかどうかを検証し続けることが重要です。その際、注意すべきなのは、ゴールには良いゴールと悪いゴールがあるということです。良いゴールと悪いゴールを隔てるのは、ゴールが測定可能で、かつ、測定尺度がきちんと明示されているかどうかです。また、目的と矛盾したゴールの設定はプロジェクトの方向性を混乱させますし、スケジュールなどの面で明らかに達成不可能なゴールを設定することも意味のないことです。
よくありがちな間違いはWebサイトの立ち上げをゴールとして捉えてしまうことです。いつまでにどの程度の規模のWebサイトをいくらの予算で立ち上げるかということは、担当者にとっては確かにひとつのゴールかもしれません。しかし、経営者にとっては、それがゴールでないのは明白です。経営者にとってWebサイトを立ち上げるのはビジネスに何らかの成果をもたらすためであり、その成果こそがゴールとなりうるべきものです。そう考えれば、Webサイトの構築はあくまで成果に向けた施策のスタートでしかありません。実際には運用を通じた改善の中でゴールを目指す必要があります。例えば、インターネット戦略の目的を営業支援ツールと定義したなら、Webサイトを立ち上げて、製品・サービスへの問い合わせが増えることを期待するのではなく、月間の問い合わせ件数のゴールを設定し運用を通じて数値目標を達成するといった現実的な定義が、プロジェクトの成功のためには重要なことです。
(3)スコープ
スコープ(範囲は何か?)何をもって、プロジェクトが成功と判断されるか、その範囲は?
- 構築物の要素は何か?
- 成果物の範囲は何か?
- 作業の範囲は何か?
- 責任の範囲は何か?
- リソース(ひと、もの、金、情報)の内容と範囲は何か?
-
スコープ目標は何か?
- コストの目標は何か?
-
品質の尺度は何か?
-
マネジメントの品質
期限の厳守度、タイム、コストに関わるもの -
成果物の品質
仕様書に対して計られる
-
マネジメントの品質
プロジェクトで当てはまらない部分があった場合は、採用しない項目もありえます。
参考:何をしないかを明確することが戦略の核心
競争戦略論の第一人者であるマイケル・E・ポーターは、「戦略とは、顧客に価値を提供する上でトレードオフ(二者択一)を行なうことである」と言っています(『日本の競争戦略』、ダイヤモンド社)。つまり戦略策定においては、何を行なうかと同時に何をしないのかが重要なのです(「何をしないかという選択が、戦略の核心である」、前掲書より)。
インターネット戦略においては、より上流の企業戦略、マーケティング戦略で提示された事業領域、標的市場を越えないことが前提条件となります。また、本来のビジネス活動で顧客が感じている企業イメージやブランド・イメージを破壊するようなイメージ訴求をWebサイト上で展開することも、顧客の混乱を招き、企業価値、ブランド価値を低下させます。Webサイトは企業(ブランド)と顧客を結ぶ最前線のコンタクトポイントです。インターネット戦略においてスコープを決める際には、自社の企業戦略、マーケティング戦略を理解した上で「何をしないか(してはならないか)」を明確にしておく必要があります。また、そうした戦略を運用においても明確な形で維持できるよう、きちんとデザインガイドラインや運用ガイドラインの形でドキュメント化しておくことが必要です。
(4)スケジュール
-
スケジュール(活動手順と時間は?)
- Must?
- Want?
プロジェクトには変更管理という項目があります。必ずしもスムーズに進捗しない場合も想定できます。あらかじめMust?/ Want?を把握しおきましょう。
(5)制約条件/前提条件
- 社会変動
- 顧客ニーズ
- 財務
- 組織
- リスク
- 権限
- 法規制
大きくは、上記のような項目が考えられます。また、企業により独自の制約条件/前提条件が存在する可能性があります。プロジェクト開始前にこれらを整理しておくことが、プロジェクト成功への前提条件と申し上げておきます。
まとめ
立ち上げフェーズにおける定義づけは、インターネット戦略を実行する上で、最上流に位置します。国家であれば憲法に当たります。ここがぶれだすとプロジェクトはスタートを切る前に失敗が確定します。
インターネット戦略の最上流を見てきました。最後に大切なことは、この定義が済んだ段階で必ず企業における決裁者にチェックを入れてもらい、承認を得ることです。企業が推し進める企業戦略、マーケティング戦略とインターネット戦略が同期していない限り、確かな効果は期待できないからです。
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