企業とは? -企業の最上流には何が存在しているか?-
企業は、一言で言えば、「利益追求集団」と言えます。しかし、利益追求のためだけに営業活動をしているわけではありません。自社の経営の最上流に何が存在しているかを捉えることは、インターネット戦略を成功に導くために極めて重要なこととして認識します。これによって戦略の性格、方向性がなぜ生まれたのかを理解することができます。
(1)意思(社会、組織、個人の視点)
企業は、「独自性」というキーワードによって存在意義を持とうとしています。他社と自社の違いとも言えるでしょう。この独自性を支えているのが、経営トップあるいは経営陣の意思であることは言うまでもありません。経営の意思は、「経営理念」「企業方針」「行動規範」「企業ミッション」「人事制度」「福利厚生」等で理解することが可能です。理解を整理するためのキーワードは、「社会、組織、個人の視点」です。経営トップが、社会をどの視点で見ているか、組織に関してどの視点で見ているか、組織要員の個々をどの視点で見ているかで、向かうべき方向性、組織編成、情報伝達システムがおおむね決まってきます。これにより、企業としての個性が決まり、独自性が何なのかを捉えることができます。また、この部分には経営層が持つ価値観が影響してくるということも念頭におく必要があります。
(2)4つの視点(バランススコアカード)
経営の最上流は、企業が発展することだけを考えているわけでありません。その前提として、いかにして企業を存続させるかを常に念頭におき企業活動を行なっています。言い換えれば、いかにバランスを取るかということに極めてデリケートに反応していると言っても過言ではありません。バランススコアカードを使用するとその視点が一目瞭然に理解できます。経営の最上流は常にこの4つの視点を持ち、市場の変化、組織状況、ステークホルダーへの満足度、組織の効率化をどのタイミングで何をするのか重心移動を繰り返しながら決定していきます。中には特に明示的には意識しない経営陣もいるかもしれませんが、その場合でもこの4つの視点は無意識のうちに働いていると理解してください。
(3)クローズド・ループ・システム
経営の本質は、砂利道をライトもない自転車に乗って前に進むようなものと言われます。いや、企業経営はそれよりもはるかに複雑な活動だとも言えます。どんな優秀な経営者でも、いまだにふらつきながら、行く手にカーブがないことを祈りつつ、おぼつかない足取りで前進していると捉えるべきです。戦略意思決定を行ない、実行結果を待って、顧客、市場情報を得て、プロセスや将来の展望をリアルタイムに変更し、また戦略の見直しを行ない、さらに改善を繰り返します。このプロセスが「クローズド・ループ・システム」と言われるものです。うちの経営者は宣言したことをよく変えるということがありませんか?これは好きでやっているのではなく、クローズド・ループ・システムが機能している証拠と言えるでしょう。
参考:知りたいのは事実だ
「知りたいのは事実だ」。これは、ナチに傾倒するテロリストの陰謀によって、アメリカとロシアが全面戦争の危機に突入するストーリーを描いた映画『トータル・フィアーズ』の中で、予期せぬ核攻撃を受け、「絶対にロシアの仕業だ」、「われわれに核攻撃などしかけたら全面戦争になることがわかっているのにロシアがやるはずがない」などと慌てふためき、それぞれの主張を繰り返すだけの部下たちに向かって、合衆国大統領役のジェームズ・クロムウェルが放つせりふです。経営者の方々もまさに日々の意思決定の場面で同じような言葉を口にしたくなることもあるのではないでしょうか。
しかし、ビジネスにおいては、事実を知りたくても、やってみなくてはわからないことが多いのも事実です。ヤマト運輸の元会長の小倉昌男さんは「やってみればわかる、やらなければわからない」がモットーだと言います(『超顧客主義』東洋経済新報社)。大量貨物輸送から1個1個の小荷物輸送を行なう宅急便へと大きな業態の変更を決める際に、損益計算を行ない、トラック1台あたりの経費に対し1台あたりの収入が上回れば利益は出るが、1台あたりのわずかな利益が会社全体でやっていけるだけの利益の大きさになるのか、一生懸命考えたそうです。そして、わからないことを一生懸命考えても駄目だ、わからなければやってみればわかると考えたそうです。
経営者が事実に基づいて判断することは重要だと思います。しかし、同時にやってみなければわからないというのも経営なのでしょう。特に競合優位性を生み出すような、新しい事業や新しい商品の開発などに関しては、やってみなければ事実そのものがない場合も多いはずです。ですが、これは逆の見方をするなら、やれば事実が生まれるということです。手元にあるわずかな情報から、きちんと初期仮説と戦略を立てて、やってみれば必ずそこから事実は生まれるのでしょう。「やってみればわかる、やらなければわからない」という言葉は、ISOなどのマネジメントシステムの根本にあるPDCAの継続的改善の仕組みや、対話型マーケティング戦略に基づく仮説検証型のマーケティングの考え方にもつながります。マーケティングツールとしてのWebサイトは、市場の事実を捉えるためにも活用できるツールです。デジタルアナリティクスを活用すれば市場のVOCを集められますし、BlogやSNSなどのビジネスへの活用によるコミュニケーションでより深い定性情報を得ることも可能でしょう。そして、それもやらなければわからないことです。
まとめ
3項目からなる企業の最上流は、インターネット戦略にどのような影響を与えるのか?それは、
- 意思は、企業の価値観を決定し、向かうべき方向性を示唆しており、企業の「独自性」「企業の色」「ブランド戦略」「サービス基準」「主要ユーザ」に大きく影響を与えます。インターネット戦略を実行するにあたっては、全体を構成する統一イメージ、トップページ等にも影響を与えます。
- バランススコアカードの4つの視点は、社会変動、ステークホルダー、ユーザの価値観の変化、競合とのギャップ度合い、会社の規模、その他社内要因によって重心移動します。そのため、現在の企業活動の重点事項がチェックでき、インターネット戦略を実行する際、広義の目的を把握可能になります。
- クローズド・ループ・システムは、企業によって個性があり、企業のもつ「思考プロセス」とも言えます。持続的発展を考える経営層に、どのような内部あるいは外部情報をフィードバックすることが進路変更や方策の制御になるのか把握でき、インターネット戦略を実行する際の効果測定の手法、測定の頻度、運用計画に影響を与えます。
ここまでは、企業の最上流には何が存在しているか、について解説してきました。企業の持続的成長という視点で捉えた場合、そのキーワードは「独自性」に他なりません。その独自性をインターネット戦略に反映させ、統一感のある戦略を実行可能にするためには、企業の事実としての最上流を捉えなければ、真の成功はありません。
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